世界のてっぺんへ
スポーツクライミング 杉本 侑翼 さん
小学校3年生の時に見ていたテレビ番組で、割り箸の厚さほどしかない突起にぶら下がって移動する姿に目を奪われました。それがクライミングを始めたきっかけです。「公園にあるいろんな遊具をよじ登るのが好きやったね」と、母からよく聞かされるので、本能的に登ることが好きなんだと思います。
壁を登るって、単純に見えて奥が深い。「最短ルート」「体力の維持」「力の入れ方」など、瞬発力や判断力が求められ「身体を使ったチェス」とも言われます。登るのが難しいコースだと、大会中であっても他の競技者と「自分ならどうやって登るか」って話し合う。攻略法を考えるのが楽しいんです。誰かが登ることに成功したら、自分のことのように嬉しいですね。いろんなことを考えて理解して、自分の知識やスキルにしていきたいのが自分の流儀。学校の勉強も「丸暗記」よりも本質や仕組みを理解したいんです。
週に4日は練習で壁を登ります。練習環境が整った施設が少なく施設ごとに壁の難易度やコースもさまざま。「いろんな環境で練習できるように」と両親が関東や四国などへも送迎してくれます。家族の支えに感謝しかないです。
自信が湧いたのは、令和2年11月、日本選手権の年代別で2位になれた事。優勝こそ叶いませんでしたが、これまでの練習の成果をしっかりと出せた納得のいく結果でした。これまで格上と思っていた選手と肩を並べて競えたことに、喜びがこみ上げた大会でした。
今は「クライミング」のことしか頭にありません。世界を舞台に、自分がこれからどれだけ登っていけるか、そこからどんな景色が見えるか。想像するだけで楽しくてたまりませんね。
「広報なばり」2023年1月号掲載
PROFILE
2022年10月 とちぎ国体(少年男子)ボルダリング2位、2021年8月 世界ユース選手権(ロシア)スピード3位など、勢いに乗る近畿大学工業高等専門学校1年生の16歳(2023年当時)。小学校3年生からクライミングを始め、中でも制限時間内に完登した課題数で競う「ボルダリング」で腕を磨く。2028年開催予定のロサンゼルス五輪 日本代表を狙う。