見出し画像

ぶどうが第一

ぶどうは栽培農家からの預かり物

 ワインの味はぶどうの出来で8割決まります。皮ごと絞ったぶどうジュースが酵母の働きで発酵し、その上澄みを一定期間貯蔵するとワインになる。決して複雑な工程ではありません。醸造家は看護師のようなもの。ワインが健康を害しないよう気をつけて、酵母がうまく働いてくれるよう見守ります。
 初めてワイン造りを教わったのは、フランスで個人ワイナリーを設立し、世界的評価を得ていた大岡弘武さん。のどごしがサラッとしていて身体にスッとしみこんでいく―そんなワインに衝撃をうけました。母の出身地スペインでもワイン造りを経験。いずれも、自分の畑で栽培したぶどうを使い、野生酵母で醸造するスタイルで、私のワイン造りの原点になっています。
 現在は、山形県などのぶどう農家からの委託醸造が事業の中心。造ったワインを「おいしいですね」と言っていただけるとうれしいですが、それは、やっぱり農家からお預かりした大切なぶどうの出来がよかったということ。まずは、生産者が評価されるのが本来ですし、ワインボトルのラベルにぶどう生産者の名前やロゴをデザインしているのも、そうした思いからです。畑で汗を流したぶどう生産者の思い描くワインを造ることが私の役割なのです。

國津果實酒醸造所 中子 具紀さん
真剣に楽しんでやることをモットーにワイン造りをしている

自分の畑で育てたぶどうで、理想のワインを

 自分の畑で育てたぶどうで、自分の理想とするワインを造ろうと、名張でぶどう栽培を始めて7年。農薬は使わず、害虫や獣害との戦いが続いています。本当は、雨が少なくぶどう栽培の好適地であるスペインでワイン造りをしようと考えていたのですが、日本で造られた自分好みのワインに出会い、これが造れるんだったら場所にこだわる必要はないなと。いや、むしろ、おもしろい。やってやろうという気持ちになりました。
 ワイン造りは醸造免許が必要で最低生産量も決められています。でも、国津果實酒醸造所では、免許がある私と一緒であれば、ワイン造りに挑戦いただくことが可能です。ぶどうを愛する人なら大歓迎。ぶどうが特産の名張で、生産者の数だけワイナリーがあると素敵ですよね。私が育てたぶどうで醸造したワインに刺激されて、私がそうであったように「自分もこんなワインを造りたい」という人が出てくることが今の目標です。

中子さんが手がけたワイン

「広報なばり」2022年1月号掲載


PROFILE

母がスペイン人で、スペイン語が使える仕事をとワイン販売会社に就職。その後、フランスやスペインで、ワイン醸造家に師事。名張でぶどう栽培を始め、滋賀のワイナリーでオリジナルブランドを創設。平成30年に名張商工会議所の「名張ワインプロジェクト」で誕生した「國津果實酒醸造所」(旧国津小校舎内)に醸造責任者として招かれた。