まちを未来へつなぐ、つつじが丘のまちづくり
子どもと大人が地域の課題を話し合う「つつじっ子会議」
「最近はあいさつをする子どもが多くなったね」。そう話すのは、つつじが丘・春日丘自治協議会会長の大内房雄さん。地域ぐるみのあいさつ運動は、平成29年に発足した「つつじっ子会議」という小中学生と大人たちが地域の課題を話し合う場から生まれました。
「あいさつが飛び交うまちにしよう」と、子どもたちが地域を練り歩いたり、あいさつを呼びかけるティッシュを配ったり、まちじゅうに看板を立てたり…。大内さんは、「地域のためにと、子どもたちからいろいろ提案してくれます。できるだけ、一緒に実現させていきたいですよね」と嬉しそう。
あいさつ運動をはじめ、地元のイベント企画や、ご当地キャラ「えみらる」の制作、子どもたちの考えた標語入りの交通安全看板の設置など、話し合われた内容が一つずつ実現されています。そんな様子を見て、会議設立時に中学生2人だった参加者が、現在では約50人にまで増えています。
子どもたちが、まちに関わり続けたいと思えるように
「空き店舗で地元の新鮮野菜を売り出してはどうか」。会議で、子どもたちからそんな提案が出されました。「空き店舗や空き家、空き地の活用など、実現にはハードルが高い課題もあります」と大内さん。
つつじが丘では、独自に空き家や空き地の把握に努めていて、昨年は、近大高専の学生とともに空き家のアンケート調査を実施。子どもが進学や就職でつつじが丘を離れる家庭が多い中、空き家になった際の対応を決めていない人が多いことが分かりました。さらに、95%が「身内がUターン移住する予定がない」と回答。事態の深刻さが浮き彫りとなりました。
「子どものころからまちと関わりを持って、社会に出ても継続して関わり続ける。そんな流れが生まれてくればいいですよね。『つつじっ子会議』のメンバーと接していると、もうすでに『地域の一員』という気持ちをもってくれているように感じます」と大内さん。
市内の高校に通う生徒で「将来的に名張市に住みたい」とした人は41%(市外在住除く)。その3分の2が「地域との関わりがある」というデータもあります。「つつじっ子会議」の取組は、まちの未来を大きく変えていくきっかけになるかもしれません。
interview
つつじが丘がめっちゃ好き
つつじっ子会議に参加するまでは、地域の人と接することもなかったけれど、今では、いろんな人に大きな声であいさつできるように。すると、笑顔でいろいろ話しかけてくれるようになって、それがなんだかうれしいなって思います。
それに、会議に出てる地域の皆さんをみていると「つつじが丘が好きなんやな」ってすごく伝わってくる。現在は、大好きなつつじが丘のことを多くの人に知ってもらえるようなクイズ企画を練っています。
つつじが丘に住み続けたい
つつじっ子会議のメンバーで考えたご当地キャラ「えみらる」が、イベントや看板、お弁当など地域のいろんなところで活用されるようになってきて、うれしいし、なんだか達成感があります。
中学校を卒業すると、会議を抜けることになりますが、地域の大人とも顔なじみになれたので、今後も「子どもフェスタ」など地域の行事に関わっていきたいですね。つつじが丘は、人が温かくて、すごく居心地のいいところ。できれば、ずっと住み続けたいなって思っています。
子どもたちも地域の一員。
一緒になってまちの未来を考えていきたいですね
この夏、自治協議会では、子どもたちの学習の場として集会所を開放。お茶やお菓子を用意したのに、ほとんど利用されなかったんです。なるほど、子どもたちに利用方法を考えてもらった方がよかったなと。子どもを地域の一員と捉え、一緒に考えることが大切だと改めて思い知らされましたね。
「つつじっ子会議」は、そんな子どもたちの声を聞ける大切な場。真剣に耳を傾け、どうすれば実現できるのか、また、実現が難しければ、なぜ難しいのかをきちんと伝えます。ある日、子どもたちが「溝にごみが詰まっているよ」と市民センターへ知らせてくれて、一緒に掃除したこともあります。地域の困りごとを自分事と捉えてくれたことがすごく嬉しかったですよね。
空き家の問題は、深刻に受け取っていて、定期的な調査を実施しているほか、近大高専の学生による調査結果を地域の広報紙でも連載。一人ひとりに危機感を持ってもらうことからはじめていこうと考えています。
これからも、子どもや女性、若者を巻き込みながら、空き家問題を含むさまざまな地域課題に取組み、子どもたちが大人になったとき、つつじが丘に住みたいな、戻りたいなと思えるような、賑わいあふれるまちであり続けたいと思います。
「広報なばり」2022年10月号掲載
※登場人物の所属などは取材時(2022年10月)のものです