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竹で未来を照らし出す

竹雀~takesuzume 代表
辻本 和也さん

 都会にあこがれ、大学生の頃大阪へ。就職後も西宮に住んでいましたが、自然豊かな田舎で育児をしようと、2009年に滝之原へ帰郷。ある日、畑で遊んでいた長男が、ミミズをつかんで見せにきました。すると、さっとツバメが飛んできてミミズをパクリ。リアルな食物連鎖を親子で目の当たりにした瞬間でした。また、木の実を食べた小鳥が、種を運んで糞とともに拡散したり、アブラムシの甘い排泄物をアリが食べ、天敵のテントウムシを追い払ったりと、田舎のあちこちで、自然は様々な連鎖の上に成り立っていることを教えてくれます。こうした光景は新鮮で、すごく感心します。

竹灯りを設置した赤目渓谷を歩く辻本さん

 一方で、滝之原では過疎化が進み、「このままでは、地元が滅んでしまう」という危機感があります。でも、本来、田舎は様々な可能性を秘めているところ。例えば、京都の料亭で出された料理に美しいもみじが添えられていた。聞けば、10枚1,000円で売られているそう。ネットでクリスマスツリー用に松ぼっくりも売られています。田舎の資源を都会で売ることができれば、雇用が生まれる。重要なのは、その土地にある身近な資源を、有効活用できる仕組みを作っていくことだと思うのです。

 滝之原に帰ってきた頃、自宅に薪ストーブを設置。周りは山ばかりなので、薪は簡単に手に入ると思っていたら、そうではなかった。山は杉や檜ばかりで、広葉樹は少なかったのです。ただ、地元の人は「竹やったら、いらない」と口をそろえました。かつて、竹で作られていた籠などの日用品や工芸品が、プラスチックに置き換わり、竹は放置され山を荒らす厄介者となっていたのです。でも、生命力があり成長も早い竹を、資源として使わない手はありません。

「重要なのは、その土地にある身近な資源を、有効活用できる仕組みを作っていくこと」と訴える

赤目四十八滝や伊勢神宮外宮などの催しに設置している「竹あかり」をはじめ、竹製のスピーカーやマイボトル、歯ブラシの柄…。厄介者だった竹を様々な商品に生まれ変わる「オール竹(チック)」としてどんどん活用していきたいと考えています。

名張の冬の風物詩となった赤目渓谷の竹灯り

 帰郷してから意識するようになった「グローカリゼーション」という言葉。「地球規模で考え、地域で身近な行動をしよう」という考え方です。竹を切って、地主から喜ばれる。竹は「オール竹(チック)」として活用し、最後は炭にして自然にかえす。そして、竹で雇用を生み出し、地域が存続する――。いま、地元のメンバー6人で構成する「竹雀」の仲間や行政などとともに、自然と共生しながら、未来へと続く連鎖をつくっていこうと、一歩ずつ活動を進めているところです。

「広報なばり」2021年1月号掲載(2021年1月時点の情報です)


Profile 

滝之原出身で証券会社勤務。長男誕生を機に名張へ U ターン。2015年に工房「竹雀」を設立し、竹を使った創作活動を開始。名張市エコツーリズム推進協議会の「なばり竹あかり SDGsプロジェクト」にも参画。

同郷でデザインが得意な福岡広志さん(写真右)とともに工房「竹雀」を設立


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