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消防士、母になる。

名張消防署 救急室
大山 優

 私を成長させたのは、消防救助技術を競う大会の選手選考でした。逆さ吊りでのロープ渡過が苦手で、男性隊員は渡り切れるのですが、私だけはダメだった。体力不足、それに高所の恐怖感があったんです。それが悔しくて、ひたすら続けた懸垂。1カ月半ほど経ったころでしょうか。「渡ってみるか」と声をかけてもらったんです。絶対渡り切る!そんな強い気持ちで20mの長さをすっと渡り切れました。その時は恐怖心なんて感じませんでした。

 これまで数々の火事や救急の現場を経験してきました。チームの足を引っ張らないよう、そして、「人の命を救いたい」という思いが私の原動力です。

 実は、祖父が入院がちで、幼いころから病院を訪れる機会が多かったんです。命の現場に立つ医師や看護師の姿に憧れがあり、人命救助の最前線に立つ救急救命士に。また、その後に授かった第1子は難産でしたが、生まれてきた娘をみて、込み上げてきた「この子を大切にしたい」という思い。命の尊さを改めて感じる瞬間でした。

 そんな尊い命を守るため、一人でも多くの人に救命の初期対応を身につけてもらうことも私の仕事です。子連れの参加を断っていた救命講習会を、子どもと一緒に受けられるようにと提案し、昨年8月に試行しました。子どもも積極的に受講してくれたのは驚きでしたね。今後、より充実した講習会となるよう検討を重ねていきます。

 私の自慢をひとつ挙げるなら、夫かな。家事や育児を共に担い、仕事ぶりも尊敬できるパートナー。夫や職場の支えのもと、娘たちにとっていい母親であり、職場でも最前線で活躍できる。そんな女性であり続けたいですね。

「広報なばり」2023年1月号掲載


PROFILE

平成30年採用、5年目の消防士。救急救命士の資格を持つ。消防や救急の現場での活動を経て、現在は名張消防署救急室で救急関係機関との調整や救急救命講習などに従事。先輩の消防士と結婚し、一児の母。現在第2子を妊娠中で、名張市消防本部が2022年12月に導入したマタニティ制服で執務にあたっている。4月に出産予定。


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